上毛電鉄沿線をアートでつなぐ　
「上毛芸術線」発起人、川堀さんに聞く

――会社員の川堀さんがなぜ「上毛芸術線」というイベントを開こうと思ったのですか。

私はいま、桐生に住み、東京のeコマースの会社に勤務しています。アートや文化が好きで休日には地方の芸術祭を巡り、アーティストの方々とも知り合いになりました。

あるとき、思ったのです。桐生は古い建物を使ってアートイベントをよく行っている。前橋もアートが盛ん。でもその２つの街が交流を持つことはない。こんなに近いのに残念だなと。

――それで前橋と桐生を結ぶ上毛電鉄に目をつけたのですね。

大胡駅や西桐生駅の駅舎は有形文化財に登録され、サイクルトレインの試みをしている、とても素敵なローカル線です。乗車するだけでなく、ほかの利用方法はないかと考えました。前橋と桐生、バラバラでやっていたアート活動をつなげたい。前橋は生糸の街、桐生は織物の街で文化も近い。

昨年９月、前橋市議会議員の岡（正己）さんに相談して、スタートしました。

――参加するアーティストと展示場所は？

アーティストは13組が参加します。学生も２組。作品は上毛電鉄の５つの駅（中央前橋、粕川、東新川、富士山下、西桐生）と、中央前橋駅、西桐生駅近辺のショップや施設に展示します。

――初めてのイベント。大変なことも多かったのでは？

一番苦労したのは上毛電鉄さんとの交渉ですね。駅にアートを展示するのは前例のないことなので、クリアしなければいけない条件が多くて。前橋市交通政策課の方にご協力をいただきました。

――大作も飾られるそうですね。

西桐生駅に現代美術家、佐藤令奈さんの横９㍍、縦２㍍の絵画を展示します。麻の布に油絵具で幻想的な世界を描き出しています。佐藤さんと一緒に駅の構内を見に行き、改札から出てくる人の視線がパッと集まる壁を見つけたんです。即座に「ここにしよう」と決めました。

――人気の絵本作家、小池アミイゴさんも出展されますね。

ご実家が粕川町ということで気持ちよく協力くださることになりました。

10月22日に中央イベント広場で開かれる「前橋コーヒーマーケット」で、アミイゴさんと参加者が一緒に作り上げる作品を、中央前橋駅に展示します。粕川駅にも別の作品を飾らせていただきます。

――多彩なアートが見られそうですね。

野生の動物の皮を使って命と向き合う作家、Imocoさんや紙粘土うんこ職人、ジャッキーホルスタインさん、赤城山麓の木工職人、Gaku Tomitaさんなど個性派ぞろいです。kight otobaさんはピアノの演奏に合わせて映像が動くインスタレーションを出展します。

同じ期間に、前橋の広瀬川と馬場川のほとりでアートフェス「River to River」も開かれます。そちらと共にアートの秋を存分に楽しんでもらえればうれしいなと思います。

ーーそれにしても構想から１年でイベントをカタチにした川堀さんの行動力はすごい。

子どもの頃から思い立ったらやり通さないと気が済まないタイプで…。親からも「猪突猛進だ」なんて言われてます（笑）。今回はいろいろな方の力をお借りしての実現、本当にありがたいと思っています。