interview

聞きたい

【聞きたい 長原駿さん】
本当の「いただきます」を伝えたい
狩猟したシカで愛犬のおやつ

2023.06.06

【聞きたい 長原駿さん】
本当の「いただきます」を伝えたい 
狩猟したシカで愛犬のおやつ

ステーキジャーキー、といっても人間の食べ物ではない。赤城山中でとれたシカの肉でつくった愛犬のおやつの名称だ。製造者の長原駿さんは元イタリアンの調理人。なぜ、愛犬のおやつづくりを始めたのか、話を聞いた。

―赤城で狩猟をする猟師さんと契約しているそうですね。

はい。シカを仕留めたという連絡が入るとすぐに取りに行き、赤城山中の小屋で解体します。解体作業は何度やっても慣れるものではないですが、時間勝負なので手早く正確にと心がけています。

―ジャーキーづくりの工程は?

シカの肉を機械で乾燥させます。私がつくっている「ステーキジャーキー」は、機械の温度と湿度を徹底的に管理し、時間は普通のジャーキーの3倍かけます。厚い肉片に旨味がギュッと詰まった特上品に仕上げるためです。特に美味しい骨の周りの肉は「ボーンジャーキー」として販売します。こちらは温度を数回変えて適度に油を抜き旨味とヘルシーさを共存させます。

―なぜ愛犬のおやつづくりをしようと思ったのでしょう。

私が育った家庭は大の動物好き。イヌやネコ、ハムスター、インコ、カメなどいつも周りに動物がいました。動物好きというのが一つの理由です。もう一つは、狩猟と出会ったことですね。

―どんなきっかけで?

調理師の専門学校に通い、卒業後は市内のイタリアンレストランで修業していました。あるとき、普段、料理で使っている肉のルーツを見てみたいと思ったのです。

狩猟免許を取得し、ベテランの猟師さんと共に赤城の山中に入るようになりました。2021年の冬、衝撃的な場面に直面しました。その日はシカがとれ過ぎて、冷凍庫に保存しきれなくなり、埋設したのです。命の廃棄を目の当たりにし、何もできない自分が不甲斐なくて。「捨てたくない」という気持ちが日に日に膨らんでいきました。

―それで行動に出たわけですね。

これまで取り組んできた料理の技術を使う、狩猟した動物の命をあますところなくいただく、大好きなペットの役に立つ、この3つを目的に2022年、「&C」を立ち上げました。

―これからの展開は?

いまはシカの肉を使ったおやつづくりがメーンですが、今後は皮やツノも使いたい。無駄にしたくないのです。工芸品として蘇らせていきたいと思います。

 

ながはら・しゅん

1997年、前橋市生まれ。大胡中―樹徳高―群馬調理師専門学校卒。前橋市内のイタリアン料理店で6年間修業しながら、狩猟免許を取得。2021年退職し、2022年、「&C」を創業。