interview

聞きたい

【聞きたい須永さん1▶︎ 】
音楽の世界からファッションへ 衝撃受けたホームレスの生き様

2021.12.20

【聞きたい須永さん1▶︎ 】
音楽の世界からファッションへ 衝撃受けたホームレスの生き様

米国のホームレスの力強い生き様に感動してアパレルブランド「BEGGARS BANQUET(ベガーズ・バンケット)を立ち上げた須永真一さん。日本語訳は「物乞いの宴」。オリジナルのTシャツにはボストンで撮影したホームレスの写真がプリントされている。メジャーデビューまでした元バンドマン。音楽とファッションの融合を常に意識している。

―バンドマンからアパレルの世界に転身しました。何がきっかけになったのですか。

「バンドはメジャーデビューでき、そこそこやっていけました。CDを出し、ファンも付いて。でも、アニメの主題歌のタイアップとかが多くなり、そのために曲を作る、お金を生むために演奏する自分がカッコいいと思えなくなった。

13年活動したバンドを休止し、事実上の解散でしたが、ボストンに行きました。ロスやサンタモニカ、ビバリーヒルズなどいろいろ巡り、2年近く滞在しました。30歳手前。貯金をおろして行きました。

自分探し? そういう意味もあったでしょう。レストランやバーで地元のミュージシャンとセッションして、お礼にパスタをごちそうしてもらったり。音楽の楽しさを純粋に味わえ、楽しかったですね。

ただ、一番衝撃的だったのがホームレスの生き様でした」

―ホームレスに影響を受けた?

「めちゃくちゃ多いのですが、日本とは全然違います。社会との接触を避けるのではなく、何とか生きようとストリートに出てくる。信号待ちの車の窓を磨いてチップをもらうとか。両足を失ったホームレスが杖を使ってパフォーマンスする場面も目撃しました。足がなければどうすればいいか、自分でできることを考えて、生きようとする。その光景に感動させられました。懸命に生きようとする姿は力強く、美しいとさえ思え、感動しました。

―確かに、日本と違いますね。

「安全で平和。社会保障制度も充実しているのが日本。なのに、過労とか、ストレスで自ら命を絶ってしまう人があまりにも多すぎる。

どんな苦境でも生きる大切さを日本人に伝えたい。どうやって表現するか考えた結果、ファションになりました。生きる強さ、美しさを感じてもらえるブランド。それが「BEGGARS BANQUET(ベガーズ・バンケット)=物乞いの宴」です」

―コンセプトは分かりました。具体的にどんな作品なのでしょう。

「自社ブランドのTシャツやシャツ、米国から買い付ける古着やアクセサリーを販売しています。

Tシャツは白が基本。これにボストン時代に撮影したホームレスをはじめ、生きる力を感じる写真をプリントしています。

古着もそう。米国の力強さ、勇気を感じられるものを集めています」

―Tシャツが7700円から高いものでは1万1000円と決して手に入れやすい価格帯ではないですね。

「世界最高の米国コットンを使い、国内で縫製しています。品質には徹底的にこだわります。職人とは密に連絡を取り合い、何度もサンプルを作り直してもらって店に並べます。しかも、少量しか作りません。そこを理解していただきたいですね」

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須永 真一(すなが・しんいち)

1987年11月、前橋市生まれ。専門学校在籍中にロックバンド「クラッチョ」を結成、13年間活動する。米国でホームレスの力強い生き様に感動し、アパレルブランドを立ち上げる。BEGGARS BANQUET(ベガーズ・バンケット)前橋市川原町に2021年6月に誕生したカフェ併設のアパレルショップ。ホームレスの写真をプリントしたTシャツやシャツ、米国の古着などを販売する。