萩原朔美の前橋航海日誌Vol.5 ▶︎
街灯の灯る街

映画の背景に欠かせないのが街灯だ。
シャープな光りを拡散してあたり一面を真昼にする最近のライトではない。
足元だけを優しく照らすスポットライト。照明というのは光りを当てるのではなく、影を作る装置のことだ。
  映画の中の瓦斯灯はなんとも言えない、淡い恋が始まりそうな装置として活躍している。
  前橋は、モノクロ映画の主役のような街灯が沢山活躍している。そこを歩くと、自分が名作の登場人物になったような気分になってくる。霧のロンドンやニューヨーク、雨の歩道や夜の橋が立ち現れてくる。そうして、10年前に「この街灯の下で逢いましょう」
と約束した人がいて、今日がその日であるかのよに思えてきて、ふと、夜の街灯の下にしばらく佇んでしまったりする。そんな事が出来る街。それが前橋だ。

萩原朔美(はぎわら・さくみ)

1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮する。2016年4月から前橋文学館館長。

関連記事