萩原朔美の前橋航海日誌Vol.7 ▶︎
薔薇の舗道

前橋の街を歩くと、路面に薔薇が咲き誇っている。カラフルなマンホールの、可愛い5 輪の薔薇に迎えられての散歩。なんとも優雅な気持ちになってくる。5輪の意味は「あなたに出会えたことの心からの喜び」なんだそうだ。マンホールの蓋に意味を込めている前橋は、ホスピタリティ溢れる街なのだ。
 ふと、自分は部屋に花を飾ったり、誰かに薔薇の花束を贈ったりしているだろうか、と考えてしまう。花束のやりとりなど遥か昔の出来事だ。最近は花屋さんを覗きすらしていない。薔薇の道を歩いていると、急に反省心が湧いてきて苦笑するしかない。久しぶりに、ダズンローズを注文しようという気持ちになってくる。薔薇12本の意味は、感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠、だそうだ。私はあと二本、創造と繁栄(笑)を加えたい。
  そう言えば、薔薇の蕾が燃える、創造と繁栄終焉のラストシーンは凄かった。あの映画「市民ケーン」は、いつまでも表現する者達の目標である。前橋の目標は、いま、創造と繁栄であるかもしれない。

萩原朔美(はぎわら・さくみ)

1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮する。著書多数。現在、多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長。

関連記事