【聞きたい福田さん9】
役に立つ前橋工科大へ。高校、企業とタイアップ

前橋市が推進するスーパーシティ構想で、計画の統括者「アーキテクト」を務める福田尚久さん。アップルでは副社長となり、スティーブ・ジョブスとともに巨大企業に成長させた。日本通信の社長であり、今年4月から前橋工科大理事長の肩書が加わった。4つの顔を持つ男が故郷の明日を劇的に変える。

役に立ちます、前橋工科大
街に飛び出し、企業と連携

-4月に前橋工科大の理事長に就任しまた。目指す大学像を教えてください。
 理想とするのは米国の地方にある大学のように、大学とコミュニティーが一体となることです。米国では例えば、有名な医学部があれば医療産業が盛んだったりします。大学の研究成果と企業の活動が一体となっているのです。世の中の変化が激しく、新しい製品やサービスを生み出していかなければならない時代です。ベースは企業独自の研究開発ですが、それとは別に独立してずっと研究しているのが大学。特に理系は役に立つというか、貢献できますね。
 -専門性の高い分野で第一人者の指導者がいます。
 「例えば、生命情報学科はゲノム情報の解析をしているが、全国に4つしかない。地方では唯一だ。システム生体工学科は全国にここしかない。医療と工学の接点ですね。脳の働き方を研究していて、アルツハイマー研究では世界でも最先端をいっています。
 地元の経営者に話しているのですが、新しい事業の材料を探しているのなら大学にいっぱい転がっているよと。でも、だれも使わない。新しいビジネス、商品、サービスをつくるなら、企業と大学が一体となってやれば効果的なんです。
 -高校との連携も求められますね。
 学生の出身地をみると、群馬県内は2、3割程度。前橋市内からは1割にも満たない。その原因は何か。高校生が工科大のことを知らないからです。どんな授業をやっていて、卒業したらどんな仕事に就くのか。
 広報と発信には力を入れます。市内の高校とオンラインでつないで授業を公開したいですね。ゲノムで遺伝解析しているとか、おもしろい授業がいっぱいあります。そういうのを見てもらって、あ、工科大に行けばこんな授業を受けられるんだと関心を持ってくれたらいいですね。小学生、中学生にも知ってほしい。
 -あらためて理事長を引き受けた経緯を教えてください。
 山本龍市長から話を持ち掛けられた時、「廃校にした方がいい」と申し上げた。市内から進学する学生が少なくて、卒業するとみんな出て行ってしまう。市立大学として市が税金を投入する価値がないですね。そしたら、市長は「私もそう思う。だから福田さんに理事長をお願いするのです」とうまく切り返された。さすが(前橋高校の)先輩だなと(笑)。「今まで通りやらないから絶対軋轢も生まれる」と話したら「大歓迎」と言われ、断れませんでした。
 前橋商工会議所と協力することも前提条件でした。いろいろな企業と連携するのが望ましい。曽我孝之会頭にお話ししたところ、快諾していただいた。大学の理事とか、役員に会員を推薦していただきました。
 -学生にはどんな期待をしますか。
 もちろん、研究をしっかりやってもらうのが一番。真面目な学生が多いようです。これは大丈夫でしょう。私が期待したいのは大学の外にどんどん出て行ってほしいということ。学生は全国から集まってきますが、コミュニティーとの接点があまりにも少ない。学内だけで生活が完結しているようで、同世代としか交流がない。これはよくないです。指導者もそうですが、学生も優秀です。街づくりとか、自由な発想力を持った若者は大きな戦力になる。コミュニティーと縁を深めて、前橋を好きになってほしいですね。


女子の比率が高い工科系大学
 【前橋工科大】1952年創立の前橋市立工業短大を前身とし、97年に設置された。全国でも珍しい公立の工科系単科大学。女子学生が3割と多い。6学科、大学院がある。各専攻とも昼夜開講制を採用している。レミオロメンの藤巻亮太さんはOB。

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