【聞きたい福田さん6】
白井屋ホテルもゼロから、ジョブズの愛した言葉

前橋市が推進するスーパーシティ構想で、計画の統括者「アーキテクト」を務める福田尚久さん。アップルでは副社長となり、スティーブ・ジョブスとともに巨大企業に成長させた。日本通信の社長であり、今年4月から前橋工科大理事長の肩書が加わった。4つの顔を持つ男が故郷の明日を劇的に変える。

ゼロから始めると現実と違う
白井屋ホテルもそうだった

―ジョブズの「言葉」で印象に残っているのは何でしょうか。
 スティーブとのエピソードはいっぱいあるけど、「言葉」でいえば3つ、「Think different」「What do you think」「I don’t care what they say」ですね。決して忘れられない、スティーブの言葉です
 ―一つ一つ教えてください。
 「Think different」というキャンペーンをやりました。よく「変わったことを考える」と訳されますが、違うんです。アメリカ人でもスティーブは教養がないから文法を間違える、正しくは「differently」だという人がいますが、そういう人に対して私はあなたの方が分かっていないと指摘します。 あれはS+V+CのC=補語なんですね。補語は結果を現します。数学の式で表現すればシンクの100乗=ディファレント、シンクの無限大で考えたことがディファレントなんです。
 ―どんなメッセージなのでしょうか。
 アップルがパソコンのビジネスモデルを構築したのが70年代から80年代にかけてですね。そのとき、いろいろ作ったがもう十何年たってきました。それまでと同じビジネスモデルでやっていたら、うまくいかないのに決まっています。
 だから、ゼロから製品を作って、ゼロから販売店作って、ゼロからサービスする。ゼロから始めることを徹底して考えようね。シンクを重ねてやりましょう。できたものを現実と比べればディファレントだよね。そういう意味なんです。
 ―ゼロから始める。現代にも必要な考えです。
 いまはもっと重要になっています。世の中どんどん変わっていくでしょう。私はよく「机上の空論を作りなさい」と指示します。徹底してロジカルにシンクを重ねた結果として、本来こうあるべきものを作ったら、それは世の中にあるものと別物になりますね。
 ジンズの田中仁社長が前橋市に白井屋ホテルを創ったのも同じことがいえるでしょう。ホテルの経験はないですね。経験ない人がホテルを始めようとした。ゼロから相当考えたはずです。だれか経験者を連れてきて建物を造らせ、マネジメントさせたら簡単にできますよね。でも、そうしなかった。
 それでは同じもの、代わり映えしないものができるだけですから。ゼロから創ろうとして、それを積み重ねた結果がこの白井屋ホテルです。そうしたら、世の中とみたら違うものになった。これが違うんじゃなくて、世の中が違うんですけどね。
 繰り返し、繰り返しゼロから考える。それが「Think different」というメッセージなんです。
 広告で使ったけど、もとは社内へのメッセージなんです。すべてのものをゼロから見直そうと。販売店の問題もそう。何がおかしいのか。販売店が35%ものとてつもないマージンを取っている。どうしてそうなったか。考えてみたらウインドウズもマックも変わらなくなっていた。変わらないものを売るとすれば販売店のロジックは何か。当然、儲かる方を売るんですよ。
 メーカーはうちの製品を売ってくださいと、たくさんマージンを与えちゃうんですよ。それに付き合うから高くなる。根本から変えないとだめ。大改革した行為が「Think different」だったのです。


米国を代表するカリスマ経営者
【スティーブ・ジョブズ】アップルの創設者の1人。NeXT(ネクスト)も創業、ピクサー・アニメーション・スタジオのCEOも務めたカリスマ経営者。アップルでは1度失脚するも復活、巨大企業に育てた。2011年10月、56歳で亡くなる。

福田尚久(ふくだ・なおひさ)

1962年7月、吉岡町生まれ。前橋高―東京大文学部卒。米ダートマス大経営大学院(MBA)修了。アップル本社で副社長に就任、スティーブ・ジョブズを支える。2002年、日本通信に入社、15年から社長。今年4月、前橋工科大理事長に就任する。

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