【聞きたい福田さん1】
スーパーシティで激変、顔パスで買い物できる

前橋市が推進するスーパーシティ構想で、計画の統括者「アーキテクト」を務める福田尚久さん。アップルでは副社長となり、スティーブ・ジョブスとともに巨大企業に成長させた。日本通信の社長であり、今年4月から前橋工科大理事長の肩書が加わった。4つの顔を持つ男が故郷の明日を劇的に変える。

心地よい「デジタルのゆりかご」 スーパーシティで前橋は変わる

  -前橋市はスーパーシティ構想を進めています。どんな街になるのでしょう。
 一言でいえば、心地よい街になります。私は「デジタルのゆりかご」という言い方をします。例えば、居心地のいいレストラン。味はいいし、スタッフの応対も最高にいい。さらに、前回来たときはこういう料理を出したから今回は別のにしようとか、自分のことを分かってくれた上でおもてなしをしてくれる。
 昔はレストランでも、ホテルでも、そういうことができる達人がいたけど、今は少なくなっていますね。そういうプラスアルファのサービスはデジタル技術を使うと簡単に実現できます。デジタルのゆりかごに包まれた、居心地の良い街になります。
―構想には全国31の都市が申請しました。前橋のアピールは独特だったようです。
 6月の内閣府への最後のプレゼンは白井屋ホテルを会場に山本龍市長、ジンズの田中仁社長、前橋国際大の大森昭生学長とともにしました。他の自治体はお役所からでしょう。新しいことが起きていて、さらに劇的に変わるであろう街中から発信しました。
 スーパーシティというとSFチックな未来都市を思い浮かべる人が多いかもしれません。そうではなく人が中心の未来都市です。それが前橋流。だから、スーパーシティ×スローシティにしました。
―スローシティにも取り組んでいましたからね。
 そういう意味では前橋は最適なのだと思います。コミュニティーのよさもまだ十分残っているし、緑も多い。知り合いに会えば挨拶する。
 私はかつて市街地に住んでいましたが、実は40年前には顔認証で決済ができてたんですよ。
―えっ、顔認証ですか。
 ツケです。魚屋さんでも、飲食店でも。ちょっと財布を忘れちゃったから今度来るときに払うよとか、月末にまとめてとか、そういうことができた。
 それに対して、今の何とかペイやQRコードで支払うのってのは好きじゃない。
―お年寄りとかITに不慣れな人は付いていけなくなりますね。
 技術が人に寄り添うのが正しいのです。QRコードで支払うのは典型的に人が技術に寄り添うもの。寄り添えない人は利用できない。
 だから、「まえばしID」はスマホだけでなく顔認証も入れた。少額だったら顔パスができます。そのためには安全安心が絶対必要になる。個人情報をいっぱい使いますから。情報を大量に残すことで、前にお話しした居心地のよいレストランのようなサービスを受けられるわけですが、その情報が洩れたら…。だれがだれと高級ホテルに行ったなんてのが分かってしまったら大きな問題です。前橋は安全安心の部分で、手を挙げた全部の都市の中で一番です。
―アップル時代に「アップルID」を作りました。
 まえばしIDの方が断然、安全性が高い。IDを取得する際は徹底して本人確認します。なりすましができないようにし、ハッキング対策も十分に講じています。安全のベースがあって情報が蓄えられる。そうなるとどうなるか。レストランの例でいえば、私の好みをよく知っているから、いつ行ってもおいしい。疲れているなと思えば、何か体にいいものを出してくれるんですよ。そこが心地いいんです。


全国5カ所選定、大幅な規制緩和
【スーパーシティ構想】AI(人工知能)やビックデータを活用して、医療、交通、教育、行政手続きといった市民生活のさまざまな分野で最先端のサービスを可能にする。自動運転、遠隔医療、行政手続きのオンライン化の実用化が期待される。 写真説明・スーパーシティ構想の選定を訴えた内閣府へのプレゼン。市街地活性化の象徴ともいえる白井屋ホテルで行われた

福田尚久(ふくだ・なおひさ)

1962年7月、吉岡町生まれ。前橋高―東京大文学部卒。米ダートマス大経営大学院(MBA)修了。アップル本社で副社長に就任、スティーブ・ジョブズを支える。2002年、日本通信に入社、15年から社長。今年4月、前橋工科大理事長に就任する。

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