【聞きたい福田さん7】
ジョブズの指示はメールで、たった2行で重要事案

前橋市が推進するスーパーシティ構想で、計画の統括者「アーキテクト」を務める福田尚久さん。アップルでは副社長となり、スティーブ・ジョブスとともに巨大企業に成長させた。日本通信の社長であり、今年4月から前橋工科大理事長の肩書が加わった。4つの顔を持つ男が故郷の明日を劇的に変える。

指示はメール、わずか2行で
求めるのは「完全なる実行」

―「Think different(ゼロから始める)」。シンプルだけど重みがある言葉です。
 シンプルといえば、スティーブの指示はメールで、わずか2行です。ある時、「倉庫の契約をすべてキャンセルしなさい」というメールが数十人の幹部に一斉送信されました。パソコンを保管する倉庫をなくしなさいという指示です。
 当時、日本にはシンガポールの工場から船で大量に運び、新品川の倉庫に置いてから各地に運んでいました。「船でなく飛行機で運べば倉庫はいらない」。そんな提案をしたら社内から猛反対です。
 ―高くなります。普通、そう計算しますね。
 でも、パソコンは1週間に1%価値が下がる。1年で半値になる法則があるんです。船便だと、販売店に着くまで3週間かかる。飛行機なら1日か2日。この差を考えれば飛行機でいいんです。やってみたら便利。九州の販売店に送るのに、船だと新品川から長距離トラック便で運ぶけど、飛行機なら福岡に飛ばせばいい。結果、物流費が下がりました。
 幹部会議でそれを発表したら、スティーブが立ち上がり、「みんな日本に行って、福田がやったことを見てきなさい」と言ってくれた。
 しばらくして、スティーブとトイレで一緒になったとき、「物流の件、答えを知っていたのか」と聞いてみました。答えは「Yes」。ピクサーのCEOもしていて、映画ソフトをディズニーストアに送る時、同じことをしていたのです。
 ―最初からそのロジックを説明すれば簡単に事が済むと思いますが。
 そこがスティーブ。「もし、言っていたら、お前は考えなかっただろう」と言われました。自分で考えないと、「パーフェクトエグゼキューション(完全なる実行)」はできないという考え方なんです。
 彼の信念は企業の強さは戦略にではなく実行力にあるということ。リーダーが自分で考え抜いたことをやらないとパーフェクトにならない。みんな抵抗したけど、福田が自分で考えたから説得できたのだと。
 ―さまざまな評価があります。
 創業時はめちゃくちゃだったと言われていました。エキセントリックだと。でも、私がみたスティーブは極めて優秀なマネージャーです。私はいま、日本通信で社長をしています。真似してあまり細かい指示は出さないようにしようとしていますが、やっぱり我慢できなくなっちゃう。だめですね(笑)。
  ―完全、完璧を求めますね。
 会議では突然、「What do you think(あなたはどう思う)」て聞いてくる。そこで、まともに答えられないと次から呼ばれない。意見がない人は価値がないと考えるし、存在が許せないんですよ。
 ―部下に考えさせ、真剣に耳を傾けるんですね。
 一方で、「I don’t care what they say(彼らが何を言っても関係ない)」とも言っていました(笑)。例えば、iPodはいい製品だったけど、最初は売れなかったんです。そこで、営業担当は生産ラインを半分にしろと言ってくるわけですが、それに対してスティーブは倍にしろと言い返す。
 意見はしっかり聞き尊重するけど、一方で自分が考え、決めたことに対して、周りが言うことを気にしていたら何も始まらないよねということなんです。

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